2011年 04月 03日
http://blogs.yahoo.co.jp/abc5def6/62660419.html ■弁護士阪口徳雄の自由発言 http://blogs.yahoo.co.jp/abc5def6/62660419.html ≪仮設住宅建設に関する法律と実際≫ 日弁連の弁護士達が約1000名ほど被災者救援に関するMLを作り情報の交換をしている。一日に100通の情報が飛び交う。私も何かできることがあるかも知れないと思い参加した。 仮設住宅の議論も今後情報の交換になると思うで、『後方支援』のつもりで仮設住宅の法律と実際の運用に関する資料を整理した。 仮設住宅の設置に関する法的根拠は災害救助法23条1項1号にある。 第23条 救助の種類は、次のとおりとする。 一 収容施設(応急仮設住宅を含む。)の供与 3 救助の程度、方法及び期間に関し必要な事項は、政令でこれを定める 法23条3項を受けて、災害救助法施行令9条1項は次の通り定めている。 第9条 救助の程度、方法及び期間は、応急救助に必要な範囲内において、厚生労働大臣が定める基準に従い、あらかじめ、都道府県知事が、これを定める。 2 前項の厚生労働大臣が定める基準によつては救助の適切な実施が困難な場合には、都道府県知事は、厚生労働大臣に協議し、その同意を得た上で、救助の程度、方法及び期間を定めることができる。 この施行令9条1項を受けて厚生労働大臣は『災害救助法による救助の程度、方法及び期間並びに実費弁償の基準』(平成十二年三月三十一日 厚生省告示第百四十四号)を次の通り2条2号で定めている。 http://www.jupiter.sannet.ne.jp/to403/hourei/sai/h12kk144.html 第2条 法第23条第1項第1号の収容施設(応急仮設住宅を含む。)の供与は、次の各号に掲げる施設ごとに、当該各号に定めるところにより行うこととする。 一 避難所(略) 二 応急仮設住宅 イ 住家が全壊、全焼又は流失し、居住する住家がない者であって、自らの資力では 住家を得ることができないものを収容するものであること。 ロ 一戸当たりの規模は、二十九・七平方メートルを標準とし、その設置のため支出 できる費用は、二百三十四万二千円以内とすること。 ハ 応急仮設住宅を同一敷地内又は近接する地域内におおむね五十戸以上設置した場合は、居住者の集会等に利用するための施設を設置できることとし、一施設当たりの規模及びその設置のために支出できる費用は、ロにかかわらず、別に定めるところによること。 ニ 老人居宅介護等事業等を利用しやすい構造及び設備を有し、高齢者等であって日常の生活上特別な配慮を要する複数のものを収容する施設(以下「福祉仮設住宅」という。)を応急仮設住宅として設置できること。 ホ 応急仮設住宅の設置に代えて、賃貸住宅の居室の借上げを実施し、これらに収容することができること。 ヘ 災害発生の日から二十日以内に着工し、速やかに設置しなければならないこと。 ト 応急仮設住宅を供与できる期間は、完成の日から建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第八十五条第三項又は第四項に規定する期限までとすること。 仮設住宅の床面積が29.7㎡以下で建設費用が234万2千円(ロ)とか、仮設住宅の期限を2年(ト)などとする『大原則』なるものは、何のことはない厚生大臣が決めた基準でしかない。 この基準などは厚生労働大臣が変更しよとすればできるのである。もちろんその調達財源と相談の上のことになるが。 阪神大震災の時の実際の費用がどれ位かかるか調べた貴重なレポートがある http://www.arch.kobe-u.ac.jp/~a7o/activity/theses-data/gra-mas/h11_m_kojima.pdf#search それによると建設費用に約300万円、その後の維持管理費用などを加算すれば400万円となった旨の報告である。 阪神大震災の仮設住宅の建設、運用に関して実際どのように苦労したかの兵庫県の資料がある。参考にすべき資料である。 http://www.bousai.go.jp/1info/kyoukun/hanshin_awaji/data/detail/3-1-5.pdf この資料の中に個人の資金で仮設住宅を建てたケースも阪神大震災で行われた報告もある。2532棟も自力仮設住宅もあったことは驚きである。 阪神・淡路大震災では、個人の資金により建設された仮設的な住宅についても建設された。神戸大学原田賢使等の調査([調査地域]神戸市東灘区、灘区、長田区、須磨区、[調査期間] 平成7年12月1日~12月29日)によると、調査区域内における自力仮設住宅は2,532棟確認でき、区域別では、長田区が多かった等の結果が出されている。また、自力仮設住宅を建設した理由は「住み慣れた土地で早急に生活を再開したかった」が最も高く、次いで「店舗・工場等を再開しないと生活できないから」・・・・・とある。 自分の土地に自力で仮設住宅を建設できる根拠は建築基準法85条1項2号である。但し30㎡以内で2年と制限がある。 阪神大震災の時に公費で自分の土地に仮設住宅を建てて欲しいという要求があったが全て国に断わられた。当時の兵庫県知事はこの点の実現ができなかった点を「残念だった」と総括している記事を見たことがあった。 東日本の被災者の仮設住宅に関する費用は阪神大震災当時と比べ一戸当たり400万円では済まないだろう。 仮設住宅の建設は緊急に避難所から解放するという点で意義があるが、コストを考えれば実に無駄という報告がある。もっと多様な被災者の住宅建設支援というメニューがあってしかるべきという貴重な報告である。宮城県の報告書の7頁参照。 http://www.pref.miyagi.jp/juutaku/data/houkokusyogaiyouban.pdf 『最後に、仮設住宅のコストパフォーマンスの悪さが挙げられる。都道府県にとって、その費用の大半が国から支出され、自らの費用負担が少なくて済むため、仮設住宅の建設が続けられているが、自治体がその全額を負担しなければならないとしたなら、おそらくはこのようなコストパフォーマンスの悪い手段をとる可能性は低いのではないか。』 仮設住宅に同じ公費が投入されるなら、自己所有土地に自費で仮設住宅を建設する被災者に仮設住宅建設費、維持管理費の合計400万円を支給する方法もあってしかるべきであろう(高額納税者などはご遠慮願い、その場合に災害援護貸付金の所得制限は低すぎるが、何らかの所得制限が必要だろう。) 被災者生活再建支援法で自宅が全壊した世帯には300万円が支給される。 自力で住宅を建設する者にプラスして仮設費用分の400万円を合計700万円を支給すれば、自力で仮設住宅に住み、2年後に明渡を要求され、その仮設住宅が撤去されるという資源の無駄使いを防ぎ、かつ被災者の恒久住宅の再建になるかと思うがどうだろう。 確かに700万円では恒久住宅建設が難しい面もあるが、あと350万円を災害援護貸付金を借りて合計1050万円前後なら何とか自宅を再建することが可能になる被災者も増えるのではないだろうか。 このような考えは、土地を持つ者と持たない者への差別だとの批判もある。震災被災者への持家援助だとの批判もある。 他方、自力で自宅を再建できない被災者には最後に『公営住宅』を提供するとすれば一戸あたり約1600万円が必要となる。このような住宅建設支援方法によると公費投入という視点では結果として公費投入が少なくなるという説もかなり説得力があるように思う。 その点はともかく『厚生省応急仮設住宅の設置に関するガイドライン』は自治体の仮設住宅建設に関する担当者や、仮設住宅のあり方を議論する基礎的事実資料になろう。 http://www.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/0/ccf991865db91f2a4925745e001fee05/$FILE/20080604_3shiryou4_1.pdf#search=' 日赤ガイドラインも同様。 http://www.jrc.or.jp/vcms_lf/oukyuu_guideline.pdf この中に『民間の賃貸住宅を借り上げること』も仮設住宅としてOKと言われているが、この点も多いに活用すべきであろう。
by the-road-of-japan
| 2011-04-03 18:24
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