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2011年 04月 15日

武田邦彦(中部大学)氏のコメント/テレビでは言えない事が!

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生活と原子力03  放射線と人間の細胞(その1)

(基礎的なことですが、これから放射性物質と長いつき合いになるので、人間の細胞と放射線について少し解説をしておきます。)

生命をもった生物がこの地球に誕生したのは今から37億年前と言われています。しかし生まれたての生物にはとても辛いことがありました。

それは、空から放射線がものすごく降って来るからです. 

最初の生物は海の中で誕生しましたけれども、その生物が海水面に上がってくるとすぐガンになって死んでしまったのです。

その原因は太陽にありました。太陽というのは核融合をしている「裸の原子炉」ですから、そこから強い放射線が地球に降り注ぐいたのです。

しかし生物は太陽の光がないと生きていけませんので、(意識があったかどうかは別にして)チャレンジ精神の旺盛な強い生物は危険をおかして海水面に上ろうとしたのです。

できるだけ多くの太陽の光を浴びようとすると、降り注ぐでくる放射線を守ることが必要になります。このことから生物には、放射線に対する防御能力が発達しました。

原始的な動物にも放射線に対して防御する力が強いのはこのような歴史的な経験からです。

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もし、そのままであれば地球上には、今のように多くの生物が住むことはなかったでしょう。しかし、今から約15億年程前、生物が吐き出した酸素が上空に上り、成層圏でオゾン層を形成したのです。

このオゾン層は、太陽からの放射線をほとんどシャッタアウトするという性質を持っていました。

その後、不運なことにしばらく地球が寒冷化したので、生物はそれほど繁殖しませんでしたが、今から6億年程前に地球が暖かくなると、放射線は来ないし、気温は温暖化したので生物が急激に繁殖します。

その末裔が今の人間です。

そして、人間が最も放射線に対する防御も発達しています。なお、夏の海水浴で真っ黒に日焼けするのは、「波長の長い放射線」でそれに対する防御も人間はとても進んでいます。

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わたくしは長く人間や生物、またプラスチック(高分子)等の材料の劣化の研究をしてきました。プラスチックと人間というと大きく違うように思いますが、石油は大昔の生物の死骸なので、石油から作ったプラスチックは人間の体と非常に似ているのです。

一つの例を挙げますと、人間の女性の足を作っている筋肉は「ポリアミド」という高分子ですが、女性が使っているストッキングは「石油からできたポリアミド」です。

つまり、ストッキングをはいている女性の足は、ポリアミドでできた自分の筋肉の上に、これもポリアミドでできたストッキングをはいているのです。

つまり、人間や生物の体の材料とプラスチックはほとんど同じもので、わたくしは長い間、「人間の体のように、自分で自分を修繕するようなプラスチック」(自己修復性プラスチック)を研究していました(詳しくは私の研究が雑誌「ニュートン」に2度ほど紹介されていますので、それをご参照ください)。

わたくしが原子力の研究をしていた頃、重要な研究テーマの一つは「放射線で材料が劣化しないこと」でした。その研究の過程で人間の細胞はなかなか放射線で死なないこと、その修復はどのようなメカニズムであることを知ったのです

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このブログでも書いていますように、わたくしは放射線に対して従来から「規制値が厳しすぎるのではないか」ということを発言してきた一人です。

それはわたくしが人間の細胞と放射線の関係を調べてみると、人間の細胞は修復力が強く、放射線でダメになってもすぐ修繕するからです。

でも、わたくしは「放射線と細胞」というある一面からしか研究していないのですが、放射線に関わる多くの専門家は「放射線と身体」の総合的な関係を研究されておられるからです。

例えば、10万人の集団がいて、ある量の放射線を浴びるとどのくらいガンが発生するかという統計的な研究や、また医学的にある放射性物質が体に入った時にどのような作用するかということも詳しく調べられています。

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原子力の分野では、日常的にも放射線と体への影響というのは議論になります。そしてその中にはいろいろな専門の先生がおられますから、それぞれの研究分野で見方が違います。

わたくしのように「放射線と細胞の劣化」ということを研究してる人は、放射線で細胞が劣化しても回復力が強いから大丈夫ではないかという感触を持っていますし、また現場のお医者さん等は放射線で障害を受けた人を治療しておられますから、やや慎重であるというだ傾向があるからです。

こう言った議論を通じて最終的にはある規制値が決まってきます。それが現在の1年間で1ミリシーベルとまでは大丈夫だという規制値になっているです。

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福島原発の事故が起こっても、私は人間の細胞は放射線に対する防御に優れているので、そう簡単にやられないと思っています。でも、それは「免疫力が強く、栄養のバランスがとれて、休養が十分」という条件が必要です。

しかし、人間はそのように元気な人ばかりではありません。赤ちゃんや病気がちの人もおられますので、やや規制値は低くなりがちです。

人間の体というのは本当に複雑なので、「わたくしが大丈夫だから、あなたも大丈夫」ということにもなりませんし、一方では、強い放射線を浴びてもあまり病気にならない人もいます。

機会がありましたらもう一度、人間の細胞が放射線のダメージからどのように立ち治っていくかということも解説していきたいと思います。

もちろん放射線に被爆して体が痛むというのは、「病気」の一種ですから、できるだけ栄養を取り、休養を十分にとり、そして免疫力をつけることが放射線に対して体を守る一つの方法であることは間違いありません。

(平成23年4月3日 午前8時 執筆)


武田邦彦


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by the-road-of-japan | 2011-04-15 07:15 | ※原発・被曝について


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