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2011年 03月 01日

黒田達雄「公費解体と応急修理」

       公費解体と応急修理
                        
“期限付”公費解体が、修理可能な住宅まで解体
大震災直後、破壊されたライフラインや道路などの復旧の妨げとなる膨大な災害廃棄物の処理が急がれただけでなく、何より復興区画整理や再開発事業の早期着工にとって解体と瓦礫処理が急がれたことで、従来にない公費(国と自治体二分の一ずつ)による解体処理が導入されることになった。当初、被災者の負担軽減として歓迎されたが、その期限は1年以内であった。
結果、兵庫県内の全壊・全焼認定棟数約11万1千棟のうち全焼約7千棟を除くと10万4千棟だが、公費解体棟数は約10万8千棟を超え、修理・補強可能な住棟を含む「全壊認定」棟数をも遥かに上回ることになった。
 公費解体棟数が「全壊認定」棟数を上回った原因として、最初に「応急危険度判定」と罹災証明に必要な「住家の被害認定」の違いが被災者には周知されず、危険度判定の赤紙を貼られた家屋は全壊と判断を誤り、公費解体を選択した例が多い。逆に全壊認定の罹災証明の方が義援金の配分などに有利との判断から、全壊として公費解体に走ったものもある。
第二に、避難所生活状態で、災害救助法による応急修理や仮設住宅などの情報不足の中、修理か解体かの判断をする間もなく、また公費解体申請1年以内という期限付きが追い討ちを掛け、自費解体を避けようという焦りとなって公費解体へと走らせた。
第三に、公費解体に較べ、災害救助法の応急修理が周知されないだけでなく、応急修理の支給額上限わずか295千円(95年当時)で、生活保護や非課税世帯などの資格要件や修理個所が最小限(風呂を含ず)に絞られるなどの制約も多かった。このため、神戸市における応急修理の実績はわずか577件で、市でその対象となる半壊・半焼棟数約5万1千棟に対して1%強でしかない。居住可能な住宅まで解体された証左であろう。
まちの復興・コミュニティ再建に支障
このように被災者は、公費解体を選択したことによって避難所生活が一層大量化・長期化し、その後も元のまちから遠く離れた仮設住宅や県外避難などの選択を余儀なくすることになった。そうした地域コミュニティが分断された状態で、地元住民不在の復興都市計画事業の強行決定に不満と混乱を生じ、却って復興事業を遅らせ、元のまちに戻れない結果を招いた。
“期限付”公費解体と住宅の「応急修理」制度問題とその周知不足が、まちの復興を遅らせた一因でもある。
これからの課題と提案
以上のことから今後の課題を整理すると、第一に、避難生活中の被災者が修理・補強か解体かを判断できる時間的余裕を与える必要があり、そのための「応急修理」制度などの情報提供を徹底させることである。従って、被災者の負担を軽減することは勿論、早期の復旧・復興の支障になる倒壊家屋などの公費解体を、恒久的に制度化する公共性は充分にある。ただ、その期限を無くすのは困難としても、被災者の対応と調整しながら適宜延長できる自治体や国の柔軟性が求められている。
 第二に、災害救助法による「応急修理」制度を最大限活用できるように、
その制度の改善を図ることが求められている。このことは避難所生活の長期化を解消するだけでなく、大量の仮設住宅や災害公営住宅の建設に要する時間と費用よりも、応急修理の方が迅速で費用も安く、仮設住宅や災害公営住宅の戸数も軽減できる。さらに自己所有地の自力仮設住宅と同様、被災者も元のまちに住みながら、自己の生活再建やまちの復興・コミュニティの再建に参画でき、地域活性化のインセンティブを示すことになる。
 そのためには、「応急修理」の資格要件や修理個所、支給額など制度の改善が必要で、また応急修理の期間は発災から1ヶ月以内(厚生労働大臣の承認により延長有り)だが、ライフラインの途絶や交通マヒの中では、期間延長を前提とすべきである。
 因みに新潟中越地震(2004年10月)では、応急修理支給額全国基準51.9万円のところ新潟県特例で支給額60万円、県独自措置で大規模半壊100万円以内、併用して最高160万円になった。能登半島地震(2007年3月)では半壊50万円、岩手・宮城内陸地震(2008年6月)では、岩手51万円、宮城53万1千円、とバラツキも見られる。資格要件では、中越地震以前は生活保護世帯や特定の資産のない低所得世帯、非課税世帯となっていたが、それ以後は年収500万円以下世帯を基本にしている。これは2004年の被災者生活支援法改正の所得要件に準じたもので、一歩前進だが、応急救助の性格を曲げることにもなり、今後の検討課題として指摘しておくに留める。                  (黒田達雄)
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by the-road-of-japan | 2011-03-01 08:21 | ?緊急仮設住宅への提言


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